ドイツの若手テノール Florian Sieversのシューベルトは理想的!

シューベルトで一番人気、知名度共に高い連作歌曲は「冬の旅」だとばかり思っていたのですが、

最近、やたら日本人歌手が水車小屋の娘の音源をYOUTUBEにアップするんですよね。

 

 

森本祐二

 

 

 

牧山 亮

 

 

Kento Uchiyama

 

 

 

Yoshifumi Hata

これ、歌だけでも、伴奏だけでも難しいのに弾き語りが出来るってだけで尊敬する。

 

とまぁこんな感じで、半年弱でこれだけ日本人の演奏がアップされているというのは、
それだけ惹き付けられるものがあるのでしょうか?

そういう私も大好きで、テノールにとっては恐らく一生勉強すべきテクニックが凝縮された作品ということもあるので、歌う側としては、低声か高声かでも作品に対するアプローチや思い入れは変わってくるのではないかなと考えています。

 

それにしても、一曲目って案外正確な音程で歌うの難しいんですよね。
結構細かい音が上がり切らなかったり、子音が立ち過ぎて母音で音果を満たせない。
子音だけフォルテにしてささやいてるみたいな感じになったりする演奏が聴かれます。

そういうのを聴いていると、結局のところドイツ語でも大事なのは子音より母音なんだな~
なんて思いながら様々な人の演奏を聴いていたところ、久々に素晴らしいテノールに巡り合えました。

 

 

Florian Sievers(フローリアン ジーヴァース 1988~)というドイツ、ハンブルク生まれのテノール歌手。

 

 

どの曲でもそうなんですが、特にシューベルトを歌うテノール歌手は、
上唇から、口笛を吹くようなポイントにずっと響きが乗ってないと、シューベルトの書いた旋律線と言葉のフレージングが美しく浮き上がってこないんです。

そして、そのような歌唱ができる歌手は本当にわずかなのですが、Sieversはそのような技術を確実に持った歌手です。

リートが上手く、更に発声技術もしっかりしていると”n”の子音までしっかり響きが通っているので、子音がちゃんと聴こえるる上で、発音に硬さがなくてレガートがしっかりしている。

なので、バロック音楽で細かい音を歌うメリスマも柔らかくて清潔感があります。

 

 

この演奏は本当に素晴らしい。

 

 

こういう演奏ができる一方で、エレキギター伴奏で「魔王」を歌うユーモアも兼ね備えてるところがまた良いではありませんか。

 

エレキギター伴奏で歌っているとは言え、歌唱は全然歌い崩しがなく、勿論シャウトなんてしてません。
それどころか、昨今に溢れる劇的表現や、演劇的な言葉の出し方を抑えて、兎に角余計なことをしない、
こんな清潔感のあるシューベルト演奏ができるテノール歌手は久々に聴きました。

こういうのは完全に私の好みにもなってしまいますから、薄味過ぎると感じる方もいるかもしれませんし、そのような感覚が間違っていると言うつもりはないのですが、
ロマン派音楽は、美しさを失わない声の範疇で表現して欲しいですし、やっぱり表現主義やヴェリズモ的な声や言葉の出し方とも違って然るべきだという考え方なので、彼の「魔王」演奏にはとても共感が持てました。

 

 

そして、彼の演奏で実は一番驚いたのが、
ロッシーニを歌っていたこと

宗教曲なので、オペラアリアのような超絶技巧や超高音はありませんが、
ドイツ系のテノール歌手によくみられるような硬い高音ではなく、
リート歌手に多いファルセットから作ったような高音でもない。

軽くて薄い声ながらも、ちゃんとベルカント物を歌える開放感があって明るい高音が出せることに驚かされました。

これほどしっかりイタリア物も歌える声と技術をもったドイツ系のコンサート歌手は正直聴いたことがないかもしれません。

彼の活躍には今後注目していきたいと思います。

 

 

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